解説|中小企業向け賃上げ税制ってなんだ?

 

はじめに

 最近話題になっている岸田政権がめざす「成長と分配」の肝いり政策の一つである「賃上げ税制」。

企業に賃金を上げさせるための税制改正大綱の方針が固まりました。

 新型コロナの影響で悪化した雇用の改善を促そうと、大企業や中小企業が賃上げに向けた企業の取り組み状況に応じて、現在の15%税額控除(一定の要件を満たせば25%)から、大企業で最大30%、中小企業で最大40%税額控除に引き上げるというもの。

賃上げをした企業に減税のインセンティブを与えるという内容です。

 まだ確定ではないのですが、中小企業庁HPに中小企業向けの暫定版が掲載されました。「どんな内容なんだろう?」と関心を持っているかたは多いと思いますので、現在わかる範囲で解説いたします。

 

 

旧所得拡大税制との変更点

 現在の「所得拡大促進税制」が、新しく「賃上げ促進税制」に名称が変わるようです。それに伴い税額控除率が上がるみたいですね。変更点を見ていきましょう。

令和4年度税制(旧税制/所得拡大促進税制)

【通常】

  • 給与総額(雇用者給与等支給額)が前事業年度と比べて1.5%以上増加させた場合、その増加額の15%を法人税または所得税額から税額控除

【上乗せ】

  • 給与総額(雇用者給与等支給額)が前事業年度と比べて2.5%以上増加させ、教育訓練費増加要件または経営力向上要件のどちらかを満たした場合、その増加額の25%を法人税または所得税額から税額控除

           

令和5年度税制(新税制/賃上げ促進税制)

【通常】

  • 給与総額(雇用者給与等支給額)が前事業年度と比べて1.5%以上増加させた場合、その増加額の15%を法人税または所得税額から税額控除
  • 給与総額(雇用者給与等支給額)が前事業年度と比べて2.5%以上増加させた場合、その増加額の30%を法人税または所得税額から税額控除

【上乗せ】

  • 通常要件+教育訓練費が前事業年度と比べて10%以上増加させた場合、【通常】+10%の税額控除

 

解説 ご存じの方も多いと思いますが、所得拡大税制は【通常】と【上乗せ】の2段階になっています。上乗せのほうが適用要件が増えますので税額控除率が上がる仕組みなんですね。旧税制/所得拡大税制は最大25%の税額控除でしたが、今回の新税制/賃上げ税制は最大40%の税額控除になるようです。大幅に税額控除率が上がってますね。あれ?経営力向上要件がなくなっていますね。

 

 

制度の概要(暫定版)

「賃上げに取り組む経営者の皆様へ」

~政府は、賃上げに取り組む企業・個人事業主を応援します~

 

解説 このようなタイトルで暫定版パンフレットが掲載されました。

実際のガイドブックがアップされてからじゃないとわかりませんが、”賃上げに取り組む企業・個人事業主を応援します”と記載ありますが、給与総額の比較だと賃上げではないような気がします。令和4年度の所得拡大促進税制もそうですが、適用年度に退職者が多ければ適用要件が難しくなりますからね。中小企業庁の間違いか?

 

 

適用対象

青色申告書を提出する中小企業者等。

 

適用期間

令和441日から令和6331日までの間に開始する各事業年度 (個人事業主は、令和5年から令和6年までの各年が対象)。

賃上げ税制ってなんだ?

解説

 対象は中小企業者と個人事業主。期間は各年度ごとになるので2年間実施されることになりますね。実際適用を受けれるのは来年の令和5年3月末の各事業者の事業年度末から。現在の経営力向上要件はなくなるみたいですね。大前提ですが法人税または所得税額からの控除です。

 

適用要件と税額控除(暫定版)

 正社員・パート・アルバイト・日雇いなどの全従業員を対象に給与やボーナスの総額(給与総額)が前年度より1.5%以上増えた場合、増加額の15%を法人税から差し引き、2.5%以上増えていれば30%まで拡大、さらに、上乗せ措置として従業員の教育訓練費を前年度より10%以上増やした場合には税額控除率をさらに10%追加して最大40%の税額控除となります。

 

まとめ

本紙内容は令和3年12月の政府決定時点のもので、今後の国会審議等を踏まえて施策内容が変更となる可能性があります。詳細情報につきましては、租税特別措置法等が成立し制度内容が確定し次第、令和4年5月頃を目途に上記HPに公表致します

 上記に記載にあるようにまだ確定ではありません。私的には助成金の扱いと経営力向上要件がどうなるのか気になりますが、いまのところ中小企業や個人事業主にとってプレゼント減税のようなものですので、この制度を利用しない手はありません。今まで毎年受けられてきた事業者さんも、はじめて制度を知って検討されている事業者さんも注目の税制といえますね。

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